美容師・小西 幸代(OAK hair deux)
1998年より美容師をしています。
仕事がら毎日たくさんの方とお話をするので、世代や立場によって変わる様々なお悩みや関心事をリアルに知る機会に恵まれています。
今まで延べ人数にして10万人以上のお客様に携わらせていただいた経験を活かし、読者の方のお役に経つ情報発信をしていきます。
50代女性のシャンプー選びで一番大切なポイントは、「頭皮と髪にいかに負担が少ないか」です。
巷にあふれるシャンプーはいかにも髪を美しくしてくれそうに見えますが、結論からいえば、シャンプーそのものに髪を美しくする力はありません。
冒頭から少々ショックなことをお伝えしましたが、ここのポイントを外さないでいると、シャンプー選びはぐっとシンプルでわかりやすくなります。
特に50代女性は地肌の水分量が減り、白髪、クセ毛、薄毛などのお悩みが増える年代です。
「シャンプーが髪をきれいにしてくれる」という迷信を捨て、安全なシャンプーで「髪が本来の美しさを取り戻すための環境を整える」のが、50代女性の正しいヘアケアです。
目次
50代女性におすすめのシャンプー
50代女性のシャンプー選びは「安全性」を重視し、さまざまな髪トラブルが起きないよう「洗い方」を意識するのが大事です。
ここでは良いシャンプーの定義を、「安全で頭皮と髪にやさしく、適度な洗浄力のもの」として「アミノ酸系シャンプー」と「石けんシャンプー」をおすすめします。
洗う力がマイルドなアミノ酸系シャンプー
アミノ酸系シャンプーの特徴
アミノ酸系シャンプーとは、アミノ酸(タンパク質を構成する栄養素)からつくられた洗浄成分がベースのシャンプーです。
洗う力がマイルドで、肌と同じ弱酸性なので髪と頭皮への負担が軽いのが主な特徴です。
ただし、ほかの合成成分が混ざっていても「アミノ酸系シャンプー」と表示されていることが多いので、シャンプーボトルの表示をチェックして、成分ができるだけシンプルなものを選ぶ必要があります。
アミノ酸シャンプーのメリット
- 低刺激でしっとりした洗い心地
- 保湿力が高く地肌がつっぱらない
- 皮膚のバリア機能を壊さない
アミノ酸シャンプーのデメリット
- 髪がペタッとしてボリュームが出にくい
- 原料の単価が高いのでコスト面で高くつく
アミノ酸シャンプーの主な成分
- ココイルグリシンナトリウム
- ココイルグリシンカリウム
- ココイルグルタミン酸ナトリウム
- ココイルグルタミン酸カリウム
人体と環境にやさしい石けんシャンプー
石けんシャンプーの特徴
石けんシャンプーといえば固形をイメージされる方が多いと思いますが、実際には洗浄成分の種類で呼び分けをしていて、粉末タイプや液体タイプもあります。
弱アルカリ性なので使い始めは好転反応で髪のギシギシ感やフケが見られますが、その後、髪本来の自然な風合いが戻るというサイクルです。
天然成分でできており、家庭から出た排水は海に流れ込んだ後に自然分解されます。
合成成分が混ざっていても石けんシャンプーと表示されることもあるので混同しないように見分けることも大切です。
石けんシャンプーのメリット
- 人体や環境にやさしい。
- 成分がシンプルでアレルギーのある人も使える
- 髪が自ら弱酸性に戻ろうとする働きで肌のバランス機能が整う
石けんシャンプーのデメリット
- 使い始めは髪がごわごわになる
- コンビニなどで手軽に買えない
50代女性のシャンプー選びで大事な3つのポイント
シャンプーの毒性についても理解しておく
市販されているシャンプーの主成分である「合成界面活性剤」は、石油や動植物性の油脂に濃硫酸を反応させてつくっています。
洗浄力が強すぎる合成界面活性剤は、肌のバリア機能を壊し、皮フの奥まで添加物の毒性成分を浸透させます。
また、毛細血管が細くなることで血行が悪くなり、薄毛や抜け毛の原因になる可能性も。リスクを知ったうえで慎重に選びましょう。
“自分の本来の髪質は自分さえ知らない”と知っておく
ほとんどの人は、生まれた時から市販のシャンプーを使って育ちます。
生まれつきだと思っていた髪質も、実は「シャンプーに入っている化学物質の反応で髪質が変わってしまっていた」というケースもめずらしくありません。
それを基準に誤ったシャンプー選びをすると、毛穴をつめたりして別のトラブルの原因にもつながります。
自分の髪質を疑い「安全安心なものを使う」という基準に立ち戻ってシャンプーを選ぶのが大事です。
“シャンプーで髪のダメージは良くならない”と割り切る
シャンプーの役割は「汚れを落とすこと」です。つまり「洗う=はがす」という作業なので、どんなに良いシャンプーでも髪は傷んでしまいます。
ここはもう割り切って、「シャンプーでダメージケアはできない」という事実を受け入れ、“髪が良くなるシャンプーを追い求める旅”に終止符を打ちましょう。
良いシャンプーにできることは、「いかに負担をかけないか」のみなのです。
50代女性がシャンプー選びで陥りやすい5つの誤解

シャンプーのCMに出てくる女優さんのようになれる
キレイな女優さんのようになれる、ボトルがおしゃれ、話題性がある……。
人気のシャンプーは持っているだけでステータス性があります。
それぞれ魅力的でキャッチーなうたい文句を掲げていますが、CMはあくまでもイメージアップのためのもの。実際の品質とは関係ないと心得ましょう。
市販のシャンプーはメーカーによって中身が全然違う
ドラッグストアには、さまざまな種類のシャンプーがところ狭しと並んでいますが、シャンプーボトル裏面の表示をチェックすれば、中身は「水、合成界面活性剤、酸化防止剤、着色料、香料」と大差はありません。
成分ができるだけシンプルで人体への影響が少ないものを基準に、安心して使い続けられるものを選び取る力が必要です。
良いシャンプーを使えば髪がキレイになる
先ほども触れましたが、シャンプーの役割は「汚れを落とすことのみ」で、ダメージケアはできません。
添加物で一時的に手触りを良くしたりツヤを出したりすることを求めず、安心安全な成分で“髪が本来の美しさを取り戻すのを待つ”というのが正しいスタンスです。
オーガニックや天然成分シャンプーは安全
一見安全そうに見えるオーガニックや天然成分のシャンプーですが、これにはなんの根拠もなく、薬事法にはっきりとした基準が設けられているわけではありません。
極端にいえば、天然成分が一滴でも入っていたら「自然派」と表示できるのです。
さらに、たとえば「天然ハーブ配合」と書かれていても、“そのハーブを抽出するための成分”は表示する義務がないので、石油系の抽出液を使用したりしていることが多いのも現状です。
無添加シャンプーは自然の素材だけでできている
これも誤解しやすいところで、「無添加=化学物質が使われていない」という意味ではありません。
むしろ無添加シャンプーに含まれている天然成分のほうが、不安定になりやすい品質のムラをなくすために一般的なシャンプーよりも多くの「安定剤」や「防腐剤」が必要となることがあるくらいです。
うたい文句に惑わされず、ボトル裏面の表示を見て実際に配合されている成分をチェックしましょう。
自分でチェックできる毒性の高い成分合成界面活性剤のリスト
ではここでシャンプーに含まれる合成界面活性剤の一覧をご紹介します。
実際ご自宅のバスルームにあるシャンプーボトルの成分表示と照らし合わせてみてください。
もし市販されているシャンプーをお使いなら、かなりの確率で同じものが入っているはずです。
- アルキル(C12,14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHCI
- イソステアリン酸PEG-8
- オレス硫酸Na
- オレフィン(C14-16)スルホン酸Na
- キシレンスルホン酸アンモニウム
- グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
- クオタニウム-33
- クオタニウム-87
- コカミドMEA
- コカミドプロペルベタイン
- ココアンホジ酢酸2Na
- ココイルグルタミン酸K
- ココイルメチルタウリンNa
- ジステアリン酸グリコール
- ステアルトリモニウムクロリド
- セテアレス-60ミリスチルグリコール
- セテス-15
- ドデシルベンゼンスルホン酸TEA
- トルエンスルホン酸
- パーム核脂肪酸アミドプロピルベタイン
- PEG-3ヤシ脂肪酸アミドMEA硫酸Na
- PEG-100水添ヒマシ油
- PPG-5セテス-20
- ベヘントリモニウムメトサルフェート
- ポリクオタニウム-7
- ポリクオタニウム-10
- ポリクオタニウム-22
- ポリクオタニウム-61
- ヤシ脂肪酸アルギニン
- ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル
- ラウラミンオキシド
- ラウラミドプロピルベタイン
- ラウレス-23
- ラウリル硫酸アンモニウム
- ラウリン酸PEG-2
- ラウリン酸ポリグリセル-10
- ラウレス硫酸Na
- ラウロアンホ酢酸Na
- ラウロイルメチルタウリンNa
- ラウレス-2硫酸アンモニウム
- ラウレス-4
- ラウレス-5カルボン酸
- ラウレス-8硫酸
- ラウレス-8硫酸Mg
- ラウレス-16
- ラウレス-23
シャンプーに配合されている合成界面活性剤はひとつでも肌への影響が大きく、複数になれば毒性も強まる傾向があります。お持ちのシャンプーに入っている合成界面活性剤が10種類を超えるようなら、継続しての使用は考え直した方がいいでしょう。
50代女性が延々とつづくシャンプー選びを卒業するために

メインの原料よりも洗浄成分を気にかける
シャンプーの中で髪と頭皮、環境への影響が一番強いのは合成界面活性剤です。
いかにも髪によさそうな成分が配合されていると聞けばついつい惹かれてしまうのが人情ですが、天然成分の基準はあいまいで信ぴょう性に欠けることや、無添加をうたった製品に化学物質が含まれていることは先ほどもお伝えしました。
大切なことは、「シャンプーは良い成分が入っていることよりも、悪い成分が入っていないほうが大事」だということを見失わないようにしましょう。
髪よりも頭皮のためにシャンプーを選ぶ
くり返しになりますが、シャンプーに「髪のコンディションを良くする力」はありません。
まずは頭皮のバリア機能を壊さない洗浄力のマイルドなシャンプーを選び、頭皮の正常なターンオーバーを取り戻すのが先決です。頭皮の状態が良くなるにつれ、髪も本来のしなやかさや弾力を取り戻していきます。
“シャンプーそのもの”よりも“シャンプーの仕方”のほうが大事
シャンプーは正しく使ってこそ効果を発揮します。間違った使い方で髪や頭皮のトラブルの原因をつくらないようにおさらいしておきましょう。
適切なシャンプーの回数
基本的には一日に1回のペースで、二度洗いをするのがおすすめです。
乾燥肌の人は二日に1回で、脂性肌の人は一日に2回と、頭皮の状態に合わせて回数を加減しましょう。
洗いすぎると乾燥してフケが出やすくなり、洗わなさすぎは雑菌の繁殖による抜け毛の原因となります。
洗い方
シャンプー剤は原液をいきなり頭皮に付けず、まずは手のひらで良く泡立て、頭皮全体をマッサージするように洗います。
“ごしごし洗い”は摩擦で成長途中の新生毛を知らず知らずのうちに引き抜く可能性があり、薄毛の原因になります。血行を良くするためにシャンプー専用のブラシを使うのも効果的です。
すすぎ
シャンプーの際、もっとも重要な工程がすすぎです。
例えば洗うのに1分かかったとすれば、すすぎには4分半の時間をかけ、シャンプー剤が頭皮に残らないよう十分にお湯で流します。
すすぎが甘く、頭皮や髪に合成界面活性剤が残留すれば、あらゆる頭皮トラブルの原因になります。
まとめ
今まではシャンプーにダメージケアを求めてきた人も多いかもしれませんが、逆にシャンプーによって髪が傷み、ごわつきやうねりなどの原因になります。
フケ、抜け毛、過剰な皮脂分泌などの頭皮トラブルも、まちがったシャンプーの習慣が原因で引き起こされたものがほとんどです。
「シャンプーはあくまでも化学物質である」ということを念頭に置いて、出来るだけ成分がシンプルで人体への影響が少ないものを選び正しく使いましょう。
また、人工的なコーティング剤のツヤではなく、髪が本来の美しさを取り戻すには最低3か月から半年ほどは期間を要します。
美しい髪と健康な頭皮に必要な環境を安全安心なシャンプーで整え、結果を焦らずに待つというスタンスで、これからの髪と頭皮の健康を守ってください。
参考文献
『なっとく!のシャンプー選び』(山中登思子、小泉まき子/彩流社)
『20歳若く見える頭皮アンチ・エイジング』(板羽忠徳/講談社)
『美髪シャンプーの嘘』(北澤秀子/幻冬舎)
『化粧品の全成分表示の表示方法等について』
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7768&dataType=1&pageNo=1
『シャンプー分析ドットコム』
https://www.ishampoo.jp/kaiseki/ingredients/5806
※記載内容は現在のサービスと異なる場合があります。最新の情報は公式サイトをご確認ください。